すべての花へそして君へ②
落ちた視線と空気を払拭するように、彼女はポンッと手を叩きながら、『それよりも。どう? 新しい暮らしは』と、明るく次の話題を振ってくれる。
『……はいっ! とっても幸せですっ』
『ふふっ。そうみたいね?』
アイくんと、カオルくん、レンくん。それからヒナタくんとシント。彼らもまた、事件に直接関わった参考人としていろいろな書類を書いたり証言をしているようだった。
ヒナタくんから、わたしをよく思っていない人もいると聞いていたから、ここへ来る都度、ちょっと気合いを入れていたりもしたんだけれど。事件が終わったからか。それともコズエ先生やヒナタくんのおかげなのか。ここへ来て嫌な目を向けられることはなかった。……ちょっと、少し拍子抜けだ。
『アイくんもね? はじめは戸惑ったけど、快く自分を受け入れてくれたあおいちゃんと花咲さんたちに、すごく感謝してるって言ってたわ?』
『わたしは……ただ、そうしたいって思ったので提案したまでで。でも、アイくんがそう思っていてくれてよかったです』
『……待つのね』
『はい。待ってます』
――――彼らへの判決。薬で狂わされていたとはいえ、彼らのしたことは重罪だ。コズエ先生には、いつも“ここ”へ来た時『最悪な結末は、覚悟しておいて』と言われていた。
けれど、一縷の望みでもあるのなら。自分たちはそれを必死に掴んでいるだけだ。彼らの罪が少しでも軽くなるのなら。一日でも早く会える日が来るのなら。何度だって、ここへ来よう。
『モミジさんの方はサラに一任してるから、詳しいことは彼女に聞くといいわ』
『はい。ありがとうございます』
その日も、自分が伝えられる言葉はしっかりと出し切ったのでお暇しようと思った時だった。
『……あ! アオイちゃん?』
『……? ……あ。もしかして』
まだ、わたしは会ったことはなかった。わたしが知っていたのは、小さい頃に見た極道の家の写真に写った彼女だけ。
『どうもはじめまして。東條 沙羅です。いつもバカ息子がお世話になってます』
『うえっ!? こ、こちらこそ、いつもカナデくんにはお世話になってます……?』
頭を下げると、上からクスクスと小さな笑い声が。上目に見えた彼女の笑った目元は、彼によく似ていた。
『あ、そうだ。雨宮さん。今日は私がアオイちゃん送りますよ』
『あらそう? それじゃあよろしくお願いします。あおいちゃん、……またね』
『……はいっ。また!』
何かを言いたそうな顔に小さく笑って、公安へと帰って行く彼女を二人で見送った。……うむ。忙しそうだ。
『……よし。それじゃあ送るわ。確か〇〇駅の方だったわよね?』
言われたのは花咲家がある近くの駅の名前だった。慌てて、ここから一番近い駅までで、と言ったんだけれど。
『ドライブがてらお話ししましょ? ちょっとくらい……私にお仕事サボらせて?』
そ、そんなことしてもいいのだろうか。けど、なんだかとっても可愛いお願いだったので、ここは素直にお願いすることに。