すべての花へそして君へ②

「え? 別に」

「明かおかしいだろあの慌てよう」

「女の子って色々大変だからねー。あ、そうそう。日焼止めって一定の時間置いたら塗り直さないと効果ないって知ってた? 一日保たないんだねー」

「それはそうだが今はどうでもいい! ……それで、何したんだ」

「ん? 舐めた」

「……もう一回聞こう。何をした?」

「あいつが口塞いできたんだもん。オレが力で勝てるわけないでしょ?」

「そりゃ手も洗いたくなるな」

「失礼だね」


 取り敢えず、あおいさんの代わりにこのバカを軽く殴っておくことにした。


<その頃。お手洗いに駆け込んだ葵ちゃんはというと……?>


 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ。パシャッ!!
 ……尋常じゃないほどの勢いで、顔を洗っていました。


「はあ。はあ。……ご、ご存じでしたか。トイレの水は飲めるくらい綺麗なお水だってこと」


 そんな情報は今どうでもいいですが▼
 手を洗うよりも真っ先に彼女は顔を洗いに来ました。葵のまわりは水浸しで、周りの人たちは完全に引いています。


(ううぅ~。そういう顔するのズルいよー……)


 けれど、それどころではない葵は火照った顔に手を当てる。
 ただポケットに手突っ込んでただけだし。ただべーってしただけだし。ただ、ちょっと意地悪な感じに笑ってただけだし。


「そ、それすらも格好いいとか、手の平舐められたの忘れてたわたしは変態ですかね、やっぱり……」


 それには、『そうですね』としか言い返せませんが▼
 取り敢えず、なんとか火照った顔が治まってきた葵は、お手洗いに設置してある掃除道具入れから道具を取り出し、ちゃちゃちゃー! っと水浸しになったそこら中のものを綺麗にしてから、お手洗いから退散しました。


「あらま!」


 そのあとすぐに、清掃のおばちゃんがやってきましたが、手洗い場付近とその床は清掃するところがないくらいピカピカになっていて、ちょっとだけ作業が助かったようです。
 ちなみに、お掃除をした葵さん。ものすごいスピードだったので、その場にいた女性たちには、残像しか目に映ってなかったとさ。


<お手洗い清掃の巻>


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