すべての花へそして君へ②
「ぶえくしょいっ!!」
「でかっ」
誰のせいでこうなったと。
けれど、肩を震わせながら笑っている彼が持っているものが目に入った瞬間、わたしは目を丸くした。
「……ヒナタくん、それ……」
「ん? ああこれ? 似てるでしょ。あんたがお気に入りの毛糸のパンツに」
「それを言うならそのクマにでしょう?」
いや、それに似てないこともないけど……。
「……くれる、の?」
「は? なんであんたにあげないといけないの」
「だって、二つ持ってるんじゃないの?」
「持ってない」
「ありゃ。そうなのか」
「三つ持ってる」
「え? み、みっつ?」
「そう。あんたとオレと、ハルナの分」
「……そこはお兄ちゃんって言ってあげなよ」
「弟だって兄貴選べないもんねー」
「ヤキモチだ」
「その通り」
おやまあ、これまた珍しい。
素直なヤキモチとともにそのクマさんをいただくと、さっきまでの申し訳なさが、お祭りの空気と彼のやさしさでふわっと溶けて消えた。
「……なに」
「クマさんだね」
「そーだね」
「クマさん好き?」
「毛糸のパンツの方が個人的に好き」
「もうっ」
いつから、ツバサくんとお揃いのクマさんを持ってること知ってたんだろうか。もしかしてこのクマさんは……。
「だって、彼氏のオレを差し置いてそんなこと二人でしてんだもん」
ふふっ。わたしがあげたんだよって言ったら、ヒナタくんもっと拗ねちゃうかな。
「クマさんだっ」
うん。これは内緒にしておこうっ。
マペットのそれに手を入れて、「ありがとうクマ!」とお辞儀をすると、「どういたしまして」と両手にはめたクマさんが言ってくれた。……おお、本当に三つだったのか。
そしてヒナタくんがするのはちょっと意外。そしてやっぱり可愛い。
「そのクマさんどうするの?」
「仏壇のとこに飾る」
「夜な夜なハルナさんの霊が取り憑いて動き出したりしてね」
「やっぱりあんた全部持ってて」
「ははっ。冗談だよ」
「マペットにすんじゃなかった……」
「え? なんで?」
「こっからさ、本当に入ってきそうな気がしない……?」
「ほら、こっからだって」って、わざわざ手を抜いてまでそこを指差すヒナタくん。ちょっと手震えてない……? 本気で怖いんだね。やっぱり可愛いなあ。
「でもそこに入るのは手だけだよ」
「入ろうと思ったら霊だって入れるって」
「だったら何か? モミジさんはわたしのお尻の穴から入ってきたとでも?」
「…………」
「こらっ。想像しちゃアカン」
「ぶはっ」