すべての花へそして君へ②
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「……まさか、わたしたちのツーショットがいいなんて……」


 写真を撮ってくれた彼女はどうやら写真部らしく、文化祭の時に展示する体育祭の写真を撮っていたらしい。
 そして準備のいい彼女は、チェキを一枚くれました。なんと心優しい方なんだ。大事な思い出がまた一つ増えた。


「けど、これはナイと思うのね」


 背中側に回ったヒナタくんの両手のマペットで、完全にわたしの顔隠れてるし。写ってないけど、若干クマさんのまあるい尻尾がわたしの鼻の穴広げていったからね。……思い出か、これも。


「夜の割には上手く撮れてるね」

「見るとこそこじゃないからね」


 それから祭りもいよいよ終盤に。櫓の周りへと集まった参加者たちは、この町に住む人たちなら知っているという通称桜音頭を、歌に合わせて団扇片手に踊っていた。


「はいそこ違うー」

「えっ? またまたあ。嘘ばっかり」

「だって嘘教えたからね」

「なんでえっ!?」


 もちろん、わたしは知らなかったので彼に教わりながら。こんな状態なので櫓の周りからは外れて。
 今年の体育祭も、企画から練習から準備から本番まで、本当に一日が楽しかったな。楽しすぎてちょっとへろへろだけど。


「「「ちかく~~~ん!!」」」

「追いかけてくんな! 祭り楽しめバカ!!」


 やっぱり、生徒会の浴衣姿ということもあり、そちらに力を入れている人は終盤にもかかわらずとても元気そうだ。まあ、若干名大変そうですけどね。このノリ久し振りだなあ。しみじみ。


「……どうして、あんな提案したの?」


 隣で同じように踊る彼に顔を向けながら、ずっと聞かずにはいられなかった話題を振ってみる。


「さあ。……楽しそうだったから?」


 けれど意地悪な彼は、そんなこと言いながらわたしに視線は合わせず、適当に踊るばかり。
 頬を膨らませればそこに指が飛んできてプッと鳴らされるだけ。「意地悪……」と言っても、クスクスと楽しそうに笑うだけ。……だった、けれど。


「……ムカつくぐらい、楽しそうに話してたからじゃん」


 足を止め、しつこく彼の袖を引っ張ってようやく、小さく吐いた息と一緒に、その視線がゆっくりと絡み合った。
 少しだけムスッとしながらだけど。片手で、両頬をブチュッと潰されながらだったけど。
 でも、たったそれだけのヤキモチの言葉が。照れ隠しの行為が。


「……――――」


 あつい熱を灯してしまったようだ。


「……あお」

「ご、ごみぇん。……にゃんでも、にゃいので……」


 今までだって、ヤキモチ妬いてくれたことあったのに。ついさっきだって……そうじゃないか。


「…………」


 それなのに今、すごく……。


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