すべての花へそして君へ②
撮った写真を見せ合っている二人の間でわたしたちの扱いが大変なことになっている中、実はわたしが、大きな大きな悩みに悩まされていることを、彼女たちはまだ知らない。
「はあ。あっちゃんもとうとう大人の階段を……」
「きっともう、何段も何段も上っちゃったんだよ……」
「あ、……あの、ですね」
「「ん??」」
「……実は、そのことで二人に相談があるんです」
「「……相談?」」
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一方、時同じくして。こちらはとあるショッピングモール内にある定食屋。お昼のピーク時を過ぎた店内は、残った数組のお客が楽しそうに駄弁っていた。
「おい。お前ら食事したならさっさと帰れよ。片すから」
「えー! ユッキーもうちょっとだけ!」
「れんれん冷たーい」
「すみませーん。ここに仕事サボってるバイト野郎がいるんですけどー」
「今は休憩中だ」
そして、この男子高校生四人組も、その中の一組であった。
開けた店の外からは、優しくて心地の良い音色が微かに聞こえ始める。どうやら外は、雨が降り始めたみたいだ。折り畳み傘、持ってきてたかな。
「にしてもウマかったなー!」
「そうか。店長に伝えておく。きっと大喜びするだろうから」
「れんれんのバイト着も、すごい似合ってたよお」
「は? いや、そんなことは……」
「別に素直に受け取ればいいのに。定食も美味しかったし、レンの制服姿も普通に似合ってたよ」
……あれ。もしかしたら外、槍が降ってるのかな。さすがに鎧とか甲冑は携帯してないよお。
驚く程素直な彼にその場の全員でギョッとしている中、当の本人はというと平然とした顔で届いたメールを確認している。
「……誰だよ」
「キサ」
「いや違え。お前は誰だっつってんだ」
「……? 九条日向。高2。昇進して副会長になりました」
「それ、れんれん以外おれらも一緒だから」
「そっか。レンはやっぱり昇進できないんだ」
「やっぱりってどういうことだ。誰のせいでこうなったと……」
「オレのおかげ、でしょ?」
「ていうかオレに何回自己紹介させる気なの。個人情報ダダ漏れなんだけど」とブツブツ言っているあたり、もういたっていつも通りみたいだけど……。
「まあ、本当に似合っててビックリしたよ。まさかその顔と髪で定食屋のバイトするなんて、こいつバカだとか思ったけど」
「おいっ」
……うん。全力の通常運転。逆に、ここまでなのは久し振りかも知れない。