すべての花へそして君へ②

「まあ確かに、完全“洋”顔で和食屋にいるのは違和感だけどな」

「それがいいって、店長にもお客さんにも言われるからいいんだっ」

「ハハッ! じゃあユッキーは所謂看板娘ってことだな!」

「……娘はやめろ」

「(はあ)」


 その代わり、たまに隠れてこっそり小さく息を吐いていることがある。楽しそうに会話している二人が気付いているかは、わからないけれど。


「きーちゃん、なんて?」

「え? ああ。今日さ、あいつら女子会なんだよ」

「? ……あーちゃん?」

「と、ユズも」


「なんか、前から約束してたらしいよ」と、頬杖つきながら少しムスッとしている様子はなんだか少し、微笑ましく見える。


「……なに」

「ひーくん気持ち悪いねえ~」

「は?」


 ――――――…………
 ――――……


『……それは、ひーくんにも相談した?』

『うん。でも、まだ焦ることはないって。そのうち選択肢が来るよって。相談してって。言われた』


 あーちゃんが進路で悩んでいたのは、きっと本当。相談したことも、勿論言われたことも。それから……。


『はあ……(ていうか何してんの。相談とかの前に、自分が言いたいことあるなら言えばいいのに)』

『……? オウリくん?』

『あ。ごめんごめん』


 ひーくんが、何かを知っていることも。……何かを、言えずにいることも。


『まあ……そのさ、太陽(、、)がギラギラしてるから、あるはずの道もあーちゃんには今見えないんだよ。だからあーちゃんは、照りつける太陽の中、しっかり目を凝らして、いろいろ自分を探ってみたらいいと、おれは思うよ?』


 ――――――…………
 ――――……


「ちょっとオウリ。言いっ放しやめてよ」

「せっかくの休日にあーちゃんと過ごせないだけで、ため息ついてるからねえひーくんは」

「……別に、ため息とかついてない」

「かまってちゃんだねー。心狭い彼氏は早々に振られちゃうんだよ? 知ってた?」

「……ねえ。オレ、オウリになんかした?」

「日頃の鬱憤」

「ええー……」


 あの時は、なんて言ってあげたらいいかわからなくて。あんな風に言ったからきっと気付いてしまった。
 ……いや、とっくの昔に気付いてたか。気付かないはずがない。


「ひーくん」

「ん? ……なに?」


 それに、おれが知っている彼女なら、もう聞いちゃってるかも知れないな。おれなんかよりも、ずっと前から。
 目の前で、また届いたらしいメールを確認している彼が――――


「ねえ、“どうしたの”」

「…………」


 何を隠しているのかってことを。


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