すべての花へそして君へ②
それから。休憩に続けて船の上でちょっと遅めのお昼ご飯をとることに。
「あの、この辺……なんですか?」
先程から船が移動する気配はなく。公安の方たちはそれぞウエットスーツに酸素ボンベを背負って、海の中へと潜っていっていた。『大体の場所は掴めている』と言っていたから、あおいさんはそう聞いたのだろう。
「ええ。当時の関係者から話を聞いたり、その時の天候、潮の流れ、舟の傷み、当時の彼女の体重、重りの重さ、その他諸々を計算した結果、ここに行き着いたの」
「それは、確かにこの間も少しお話を聞きましたけど……」
「だから、この辺りに沈んでるんじゃないかと思うのよ。でも、範囲を広げてみてはいるんだけど、なかなかそれらしきものすら見当たらないのよね」
「そうなんですねえ。どこにいってしまったのでしょうかあ」
ふと、顎に手を当てていたあおいさんが、顔を上げる。
「もう一度、その計算した資料、見せてもらってもいいですか?」
「え? ええ、もちろん。いいわよ」
それから昼食を食べたオレらはぐるりと机を囲み、彼らから拝借した資料から、もう一度位置の特定をすることに。
季節は春先。水温は冬の気温とほぼ同じ。天気は、最低なことに季節外れの霙。気温は、春にもかかわらず氷点下。時間帯は夜中。……きっと、誰にも見られないようにということからだろう。
「……月」
目を覆いたくなるほど酷い調書に視線を落としていると、彼女から小さくそうこぼれた。
「引力の関係ですね。この日は多分引き潮」
「ううん。多分満潮だ」
「……? ですが、計測上は引き潮となっていますけれどお」
「あおいさん? どうしてそうだと?」
「ん? ……勘!」
「え。あ、アオイちゃん……?」
勘だと言っている割には、どこか自信に溢れているような瞳。それに、彼女の勘はただの勘ではない。
「サラさん。お願いがあるんですけど」
「……何かしら」
あおいさんの実力をよく知っている彼女は、真剣に話を聞いてくれるようだ。……いいや、彼女だけじゃない。ここにいる人たちは、きちんと彼女の話に耳を傾けてくれていた。
「ちょっとそこまで、海上ドライブしませんか?」
にもかかわらずあおいさんがそんなことを言うもんだから、ノリのイイその場の全員が、昭和的にズルッと転けた▼