すべての花へそして君へ②
ただしょっぱいだけの
「あおいさんあおいさん! カモメさんが飛んでますよっ!」
「あ! ほんとだねー」
「アイ。そんなことやったって、こいつがオレのライフジャケットから手を離すことはないんだって」
「あおいさん! 俺のも掴んでください!」
「ん? ……はいっ。両手に花~」
何をやってるんですか、何を。
「お子様ですねえ~」
「――じゅぽっ! うん。子どもだな」
『いやあなたがな』と、皇さんを見ながらみんなも心の中で思っただろう。みんな、同じような目をしていたから。
只今、捜査は一旦やめて休憩中。一時の休憩時間を、船の上ではしゃいでいる。特にアイさん。
「大丈夫? 水分補給する?」
「ううんっ。さっき飲んだから大丈夫! ヒナタくんは大丈夫ですか?」
「え? ……うん大丈夫。ありがと」
「へへ」
時々さらっとイチャつく二人を見て、少しムスッとするアイさん。なんとか彼女の気を引こうと試行錯誤しているみたいだが、作戦に成功したという報告が上がっても来なければ、今のところ見てもいない。
「皇さんは……その、大丈夫なんですか? いろんな意味で」
「ん? ああ。糖尿病の脅威か。ちょっと今回いくつか検査に引っ掛かったけど大丈夫だろう」
「え。そんなこと聞いてなかったんですけど、それって大丈夫じゃなくないですか?」
「月雪。時には犠牲も大事だ」
「何がですか!? あなたもオレと会話のキャッチボールしてくれないんですか!?」
そんな文句を言うオレの手の平にそっと、なぜか飴がひとつ乗っかった。
「い、いえ、別に要らないんですけど……」
「よく言う。人の幸せは、他人の犠牲で成り立っていると」
「え。……あなたも、そうだと言うんですか」
「いいや。なんでそんなことを言うのかな、と思って」
「はい?」
「こんなにも幸せそうな二人を見てたら、こっちまで幸せな気分になるって話」
それは……確かに。同意します。
飴の包みを開き、口に含む。なんでかさっきよりも少しだけ、幸せな気持ちになった気がした。