すべての花へそして君へ②
――お前にできないことはないだろう? と。
さすがシランさん。お父上。現当主様。彼はちゃんと、シントの実力をご存じみたい。
それで、思う存分桜で暴れて帰ってきて、皇を一緒に立て直そうと。……そういうことなんだろう。
「アキラくんに言ってないのは?」
「こんなこと言ったら、わざと成績とか落としそうだから」
「それは……ある気がする」
「でしょ? まあ杜真くんの後輩とか、ほんと嫌で嫌でしょうがないけどね」
「どういう意味ですか?」
どこから湧いて出たんですか、トーマさん。
「そのままだけど? 何か? 俺にもあおいの制服&エプロン写真ちょうだいよ」
「そのままとかどういう意味かさっぱりわかりませんね。何してくれるんですか?」
「そのままはそのままだって。じゃあ葵のお着替えシーンでどう?」
「そのままとかもうどうでもいいです! 戴きます!!」
「そんなもの今すぐ破棄しなさい!」
なんだこいつら。何やってんだお前ら。ほら、カエデさん見てみろ。頭抱えてんぞ。
「えー。なんで日向くんや杜真くんはよくて、俺はダメなのー」
「シーンの問題に決まってるでしょうが」
「え? お着替えシーンって言っても、靴下履いてるだけなのに」
「……ほんと、いつそんなもの撮ってるのか知りたくて知りたくてしょうがないんですけどね」
……って。ちょっと。ちょっと、トーマさん? なんでそわそわしてるんですかっ。
「トーマさん。靴下でも欲しいんですか」
「もらえるものなら!!」
いつかこの人、本当に捕まりそうだけど、大丈夫かな。
まあ靴下履いてる写真だけならと思って、二人の仲をそれで取り持つことにした。
「……ま。葵が桜とか来たら、ほんとにもうダメだけどね」
「え? ……あは! どうしようっかな~」
大学……かあ。アキラくんやシント、トーマさんがいるとなると、これまた大学生活うるさくなりそうですな。
そんな進路もアリかもね、なんて思っていたけれど、なぜかシントが驚いたようにこちらを見てきていた。……変なこと、言ったっけ?
「……まあそれはまだ先の話、か」
「え? ……シント?」
けれど彼は、どこか寂しげな顔でぽんぽんと頭を撫でてくるだけ。それについてはこれ以上、何も言っては来なかった。
「大学を出たら、皇を変えるよ。父さんと秋蘭、それから楓と。義母さんが安心してくれるように。いい会社になるように」
親孝行できるのは葵のおかげだ。ちゃんとこういうことを考えられるのも。
「……だから、葵も頑張って。俺も、自分がしたいことをこれからしていくよ」
なーんて。そんな言葉に、やっぱり年上なんだよねと再確認。
「……うんっ。自分がしたいこと、わたしも絶対見つけるよ!」
残念なことに、話に夢中になっていたせいでかき氷はすっかり赤い液体に変わってしまっていたけれど。包容力のあるその言葉一つ一つに、彼はいつも一緒に安らぎも届けてくれる。それはきっと、これからも変わらず。