誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
更衣室のドアを開けたとき、かすかにすすり泣く音が聞こえた。

「……どうしたんですか?」

声をかけると、ロッカーにうずくまっていたのは営業部の川口さんだった。

目元を赤く腫らし、ぐしゃぐしゃになったハンカチで何度も頬をぬぐっている。

「いえ、すみません……ちょっと、取り乱してしまって……」

そう言いながらも、涙は止まらないようで、再びぽろぽろと零れ落ちていった。

私はそっと彼女の隣に腰を下ろし、視線をスマホに落とした。

画面に映っていた名前――桐生 隼人。

咄嗟に言葉がこぼれる。

「もしかして……桐生部長と、何か……?」

川口さんは一瞬だけ私を見た。揺れるまなざし。けれど否定しなかった。

黙ったまま、唇を噛みしめる彼女の表情が、すべてを物語っていた。
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