誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「乾杯、かな?」

「乾杯。」

グラスの縁が触れ合う。

軽く口に含んだワインは、少し渋くて、少し甘かった。

まるで、今日の私の気持ちそのもののようだった。

「着替える?」

「え?」

不意に差し出されたのは、彼のシャツだった。

ゆるくて柔らかい、生地の良い白いシャツ。

「これ、着なよ。シャワー、先使って。」

――緊張が、体を走る。

だけど、その優しさが、少しだけ私の心をほどいてくれた。

「ありがとう。借ります。」

私はシャツを受け取って、そっとバスルームへ向かった。

扉の向こう、鏡に映るのは、これから恋を始めようとしている自分の姿だった。
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