誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
(どうして……満たされないんだろう)

胸の奥が空っぽで、どうしても埋められなかった。

さっきまで、あんなにも彼と肌を重ねていたのに。

あんなにも――愛されていたはずなのに。

「紗英、どこにいる?」

寝室から彼の声がした。

それだけで、背筋に熱が走る。

「……ああ、キッチン?」

気配が近づく。

振り返る間もなく、上半身裸の隼人さんが、背後から私をそっと抱きしめた。

「こんなところで、何してるんだよ。」

彼の腕が、私の腹部にしっかりと回される。

背中に感じる熱、胸元にあたる彼の鼓動――全てがまだ、生々しい。

「もう一回、しよう」

耳元で囁かれたその声に、体の奥が揺さぶられる。

さっきまでの激情が、まだ彼の中に残っているのだと分かる。
< 139 / 291 >

この作品をシェア

pagetop