誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
指先が冷たくなって、喉の奥がじわりと痛む。

あれほど熱く抱きしめてくれた腕。

私を「初めて連れてきた」と言ったこの部屋。

優しく囁いてくれた言葉のすべてが――

ほんの一瞬で、信じられなくなっていく。

(私、何を信じていたんだろう)

喉に詰まった涙が、どうしてもこぼれてしまいそうで、私はぎゅっと口を閉ざした。

遠くで、彼の寝息だけが穏やかに響いているのが、むしろ残酷に感じられた。

「水、飲もう。」

そう思っただけで、足は自然とキッチンへ向かっていた。

冷蔵庫から取り出した冷たい水を、ぼんやりとコップに注ぐ。

だが、水はすでに満ちていて、とっくに縁からあふれ出していた。

ポタ、ポタ――。

床に落ちる音に、はっとして手を止める。
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