誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「まっすぐ、か……。俺も昔は、あんなだったのかな。」

「想像つかないなあ。隼人さんの子供時代。」

「おい、失礼だな。」

そう言って、彼は私の頭をポンと撫でた。その手が、少しだけ優しくて、少しだけ切なかった。

「……もしさ」

「うん?」

「紗英に子供ができたら、ちゃんと父親になれるかな、俺。」

不意に投げかけられたその言葉に、胸がきゅっとなった。

真剣な顔で空を見上げる彼に、私はゆっくりと笑みを返した。

「きっと、大丈夫。だって……私が隼人さんをちゃんと見てるから。」

隼人さんは一瞬驚いたような顔をして、私を見つめた。

「……ほんと、お前って、たまにずるいくらい優しいな。」

そして彼は私の手をそっと握ってくれた。

木漏れ日の下で繋がれた指先が、確かな温もりを伝えていた。
< 152 / 291 >

この作品をシェア

pagetop