誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
隼人さんの家に帰ると、私はふとリビングの棚に目をやった。

そこには、シンプルな銀のフレームに収められた一枚の写真が飾られていた。

「これ……子供の頃の隼人さん?」

私は思わず声に出していた。

写真には、小さな男の子が一人、笑顔でピースをしていた。

隣には少し年上らしい少年がいて、同じように笑っている。

二人とも、目元がよく似ていた。

「どちらが隼人さん?」

「小さい方。」

「へえ……可愛い。」

私はしゃがみこんで、写真にじっと見入った。

日差しの中で無邪気に笑うその瞳には、今のクールな隼人さんの影は見当たらない。

「こちらはお兄さん?」

「……ああ。」

ほんの少し、隼人さんの声が低くなった気がした。

写真を飾っているということは、きっと今も仲がいいんだろう。

そう思って、私は何の気なしに尋ねた。
< 153 / 291 >

この作品をシェア

pagetop