誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
だから今も、リビングの陽の当たる場所に飾られている。

「紗英、俺さ……もし子供ができたら、兄貴みたいな人間に育てたいんだ。正直で、優しくて……誰からも好かれるような。」

私はうんとうなずいた。

「きっとできるよ。だって、隼人さんもすごく優しいから。」

隼人さんは、私の手をぎゅっと握りしめた。

その手の温もりが、今も過去も、そっと包んでくれている気がした。

隼人さんは、ぽつりとテーブルの前に座り込んだ。

その背中は、いつもの堂々とした姿とは違って、小さく見えた。

「兄貴は、優秀だった。大学も……一流大学に合格したばかりだったんだ。」

静かに語られる言葉の一つ一つに、過去の重みが滲んでいた。

その横顔を見つめながら、私はそっと彼の隣に腰を下ろした。
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