誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「でもな、俺……今、初めてちゃんと好きになれた人がいる。」

私の胸が、きゅっと鳴る。

その“誰か”が、自分であってほしいと、心の奥で願った。

「兄貴が生きてたら、なんて言うかな。“お前にしては上出来だ”って、笑ってくれるかもな。」

私は、ぎゅっと彼の手を握りしめた。

「隼人さん。」

彼は私の方を見た。

その瞳には、涙はないけれど、代わりに温かい光が宿っている。

「お兄さん、きっと喜んでますよ。だって、こんなにも真っ直ぐに、今を生きようとしてる隼人さんを見たら……誇りに思うと思います。」

彼は、写真の前で静かに頭を下げた。

「ありがとう。」

その言葉が、私に向けたものなのか、天にいるお兄さんへのものなのか、分からなかった。

でも、私の心は静かに満たされていた。

彼の過去と、少しだけ触れ合えたような気がして――。
< 159 / 291 >

この作品をシェア

pagetop