誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「兄貴……」

ぽつりとこぼれた声が、あまりに静かで、胸が痛くなる。

「俺、ずっと……羨ましかったんだ。兄貴は両親に期待されてて、成績も良くて、何をしても褒められてた。俺がいくら頑張っても、兄貴には敵わなかった。」

悔しそうでも、懐かしそうでもない。

ただ、ぽつんと落ちるような声だった。

「でもな、不思議と嫌いにはなれなかった。憧れだったんだ、兄貴のこと。」

私はそっと、彼の手に自分の手を添えた。

その指先が、少しだけ震えている。

「兄貴が事故で亡くなってから、俺……全部壊れた気がした。家族も、将来も、夢も。何を目指していいのか分からなくなった。」

話す彼の背中が、小さく見えた。

あの隼人さんが、こんなにも繊細で傷ついていたなんて。
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