誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
その瞬間、緊張がピークに達し、私の額にじわりと汗がにじむ。

――私、まさにその“地味な人”ですけど。

「なんか、どんな人か気になるわねぇ。」

「まさか社内にいたりして。」

「ええっ?」

私の頭の上に、まるで雷でも落ちたような感覚。

「お、お茶いれてきます!」

私は慌てて席を立った。空になったマグを握りしめて、逃げるように給湯室へ。

後ろから、美羽さんがくすっと笑っている気がした。

給湯室の蛇口をひねりながら、私はひとり呟いた。

「お願い、これ以上詮索しないで……」

でも。

でも、どこかで、少しだけ誇らしかった。

だって――“あの桐生部長の本気の相手”が、私なんだから。

すると、美羽さんがマグカップを片手に給湯室に入ってきた。
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