誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
結婚――?

あの隼人さんが? あの遊び人が?

私とは真逆の世界にいた人が――私との結婚を考えてる……?

「私とはそんな話、一度も出たことなかったのに。篠原さんとは、考えてるなんて思ったら……なんかさ、ちょっと意地悪したくなるのよ。」

その言葉に、胸の奥がひりついた。

「……やめてください。」

震える声で、そう言った。

でも美羽さんは、もうマグを片手に出口に向かっていた。

「大丈夫です。」

振り返りもせずに、笑いながら言う。

「二人きりの時だけなんで。」

その言葉は、まるで宣戦布告のようだった。

水面下で揺れる女の戦い。

会社の中での均衡は、今、崩れ始めている。
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