誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
お昼休憩後、書類を抱えて倉庫の扉を開けると、先客がいた。

「あっ……お疲れ様です、一条さん。」

「……ああ、篠原さん。」

顔を上げた一条さんは、どこか不機嫌そうだった。

目が合っても、すぐに視線を外す。

「……あの、何か……」

「――そう言えばさ。桐生部長にお持ち帰りされたんだって?」

「えっ?」

心臓が止まるかと思った。

「……あ、あの、それは……」

「上林さんとの会話、聞こえて来たよ。壁、薄いから。」

うわあああああ……!!

膝から崩れ落ちたくなるほどの羞恥が襲う。

「なんで?」

一条さんが、急に真剣な顔で私の目を見る。

「なんで――泣かされるのに、抱かれたの?」

その一言が、胸に鋭く刺さった。

言葉が、出てこなかった。

あの夜のこと、翌朝のこと。

確かに泣いた。たくさん。

でも、それでも――
< 200 / 291 >

この作品をシェア

pagetop