誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「そんなこと……言わないです、あの人は……!」

「言うよ。誰にでも。“本気だ”とか、“守る”とか。……それが、あの人なんだ。」

ぎゅうっと胸が締めつけられる。

信じてきた想いが、少しずつ崩れていくのを感じた。

「俺は、そんな言葉、軽々しく言わない。」

そう言った一条さんは、私の肩をぐっと掴み、ためらうことなく抱きしめてきた。

「ちょっと……!何して――」

「俺、ずっと……ずっと我慢してた!」

耳元に届いた声は、震えていた。

「好きだった。ずっと。なのに、あんたはあの人ばかり見てた。」

抱きしめる力が、少しだけ強くなった。

「だからもう、黙ってられない。桐生部長のものになんか、なってほしくないんだ……!」

私は動けなかった。

一条さんの腕の中で、心だけがぐらぐらと揺れていた。

好きなのは、隼人さんのはずなのに。
< 202 / 291 >

この作品をシェア

pagetop