誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
でも、一条さんのこの真っ直ぐな想いも、確かに今、私の胸を打っている。

どうして。

こんなに苦しいんだろう――

「好きだ。」

その瞬間、唇が塞がれた。

驚いて目を見開いた私の背後で、抱えていた書類が床にばらばらと散った。

けれど彼の腕は、私を放そうとはしない。

熱い、真剣なキス。

強引で、でもどこか苦しげなキスだった。

「い、一条さん……やめ……」

放そうとしても、彼の腕は微動だにしない。

「桐生部長のモノになんかなるなよ。」

耳元で囁く声が、熱を帯びている。

その声音に、胸がドクンと鳴った。

「……俺のモノになれよ、紗英。」

切羽詰まったような表情で、私を見つめる一条さん。

まるで、これまで必死に隠してきた想いが、

今にも彼自身を壊してしまいそうな――そんな危うさを孕んでいた。
< 203 / 291 >

この作品をシェア

pagetop