誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
彼は私の手を取った。

「紗英は俺を裏切ったんじゃない。“壊された”だけなんだって。」

涙が頬を伝う。

「……私、自分が嫌いになった。でも……隼人さんが、こうしてそばにいてくれて、救われた。」

「救われたのは俺の方だよ。」

彼は私の手の甲にそっと唇を落とす。

「仕事の顔じゃない、おまえの素の顔も、泣き顔も、怒った顔も、全部見て……それでも好きになった。」

「私も……隼人さんじゃなきゃ、だめなんです。」

「だったら、これから先も……ずっと、俺の隣にいて。」

そっと抱き寄せられる。夕陽の中で、温もりだけが確かだった。

「……ありがとう、隼人さん。」

「俺のほうこそ、ありがとう。」

二人でそっと指を絡め、ただ静かに寄り添った。

あの日の傷も痛みも、この人となら、越えていけると心から思えた。

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