誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
車は静かに住宅街を抜け、郊外の小さな湖のほとりへと停まった。

夕暮れが水面を染め、風が優しく草を揺らしている。

「……ここ、落ち着くでしょ。」

隼人さんが静かに言った。

私は無言で頷き、彼の隣に腰を下ろした。

しばらく沈黙が続いたあと、私はぽつりと呟いた。

「……なんで、そんなに優しくしてくれるんですか?」

視線を落としたままの私に、隼人さんはまっすぐ言った。

「愛してるからに決まってる。」

その声には、迷いがなかった。

私は顔を上げる。彼はまっすぐに私を見つめていた。

「紗英……正直、辛かった。頭ではわかってても、心が追いつかない瞬間もあった。」

「……うん。」

「だけど……おまえが泣いて、震えて、俺の腕の中で“ごめんなさい”って言った時、わかったんだ。」
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