誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
声が震える。涙が頬を伝って落ちた。

隼人さんは、静かに私の肩に手を置いた。でも私は、その手を払ってしまった。

「……ごめん。でも、本当にそれだけなんだ。俺がキスを返したわけじゃない。ただ、美羽が――」

「でも黙ってた。」

私の唇がかすかに震える。

「それが、一番……苦しいの。」

すると、隼人さんの表情が曇った。

「じゃあ何か。他の女とキスしたって、言えばよかったのかよ。」

低く響く声。怒っているというより、苦しんでいる。

眉間に深く刻まれたしわが、それを物語っていた。

「紗英の……お前の、傷つく顔を見ながら、『キスしたんだ』って?冗談じゃない。」

隼人さんは私に一歩、二歩と近づいてきた。そして――そっと私の頬に触れた。
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