誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「キスされたのは事実だ。でも、俺の気持ちは……一瞬も揺らいでない。君しかいない。」

彼は前を向いたまま、拳を握っていた。

「信じろよ、俺を。」

その一言に、涙がこぼれた。止まらなかった。どんなに心が揺れても、やっぱり私は――

「……好きなの、隼人さん。」

彼が私の手を強く握った。

「なら、もう逃げるな。俺から離れるな。」

温かい体温が、指先から私の心まで届いた。


静かな部屋。互いに向き合ったまま、言葉よりも沈黙がすべてを語っていた。

「……触れても、いい?」

隼人さんが低く囁いた。

私はゆっくり頷く。

「もう一度、俺のものになって。」

キスは優しく始まった。けれど、すぐに熱を帯びていく。私は彼の腕に抱かれながら、ずっと求めていた温もりに包まれていた。

「もう離さない……紗英。」
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