誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
給湯室の静けさの中、私の声が少しだけ響いた。

「美羽さん、話があります。」

美羽さんは、紙コップにコーヒーを注ぎながら、ふとこちらを向いた。

「何ですか?」

その表情は、まるで“何も知りません”というような無垢な顔。でも、私はもう騙されない。

キスの件も、あのメールも、全部“なかったこと”にするつもりなんだろう。

私はまっすぐ彼女を見て言った。

「もう、桐生部長に構うのを止めてもらえません?」

美羽さんの手が、コーヒーを持ち上げたまま止まる。

「……構うって、どういう意味?」

「私、見てました。仕事帰りに一緒にいた時の会話も。あの……“熱い夜”のメールも。」

その瞬間、美羽さんの笑顔がぴたりと消えた。

「篠原さん、もしかして……スマホ、勝手に見たんですか?」
< 246 / 291 >

この作品をシェア

pagetop