誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
凛とした声が空気を裂いた。

振り返ると、そこに一条さんが立っていた。

スーツ姿のまま、真っすぐにこちらを見ていた。

一歩ずつ、隼人さんとの間に割って入るように歩み寄ってくる。

「……一条。」

「俺の彼女に、勝手に触れないでください。」

冷静な口調。だけどその中に、怒りと独占欲が確かにあった。

私は、その背中を見つめながら、震える心を静めようとした。

「俺の女だ。」

桐生部長の低い声に、一条さんは微笑を浮かべながら言い返す。

「今は俺の彼女です。」

そう言って、私の肩を引き寄せた。温かくて、安心する腕。

「……あんたも分かったんだろう。」

一条さんはまっすぐ隼人さんを見つめた。

「愛にすがりたい気持ちが。」

桐生部長の眉がピクリと動き、唇をきつく噛みしめる。
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