誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
その言葉に、おばあちゃんは目を丸くした。

「あいやあ!こんないい男、町内どころか、漁港にもいねえわい!」

パシンと私の肩を叩いて笑うおばあちゃん。すっかり隼人さんを気に入ったようだ。

「こんな男を捕まえるなんて、紗英もやるもんだねぇ。大事にせんといかんよ。」

そう言って、私の腕をぽんぽんと撫でてくれた。

家に入ると、懐かしい畳の香りがした。縁側の先に広がるのは、子どもの頃に毎日見ていた、潮風に揺れる庭。

そこに、エプロン姿のお母さんが出てきた。

「まあまあ、遠いところをようこそ。お疲れさまでした。」

「こんにちは。桐生隼人と申します。お世話になります。」

深く頭を下げる隼人さんの姿に、お母さんもにこりと微笑んだ。

「まっすぐな挨拶ができる方ね。安心しました。」

「恐縮です。」
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