誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
玄関の奥から、魚の煮付けのいい香りが漂ってくる。

「さ、まずはご飯にしましょ。海の幸、たくさん用意してあるから。」

まるで昔に戻ったような、あたたかな空気が、私の胸をじんわりと満たしていった。

応接間に入ると、テーブルには色とりどりの料理が並び、湯気と共にあたたかな家庭の香りが広がっていた。

「ようこそいらっしゃいました。」

その声に振り向くと、厳格そうな表情のお父さんが座っていた。

大きな体に、海風で焼けた顔。私は思わず背筋が伸びる。

「桐生隼人です。宜しくお願い致します。」

隼人さんは深く頭を下げ、まっすぐにお父さんを見据える。その瞳に、偽りはなかった。

私もその隣に座り、緊張しながらお茶を受け取る。

そして——

「突然の申し出をお許しください。紗英さんを、お嬢さんを僕に下さい。」

部屋が一瞬、静まりかえった。

お母さんもおばあちゃんも黙って様子を見守っている。
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