誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
お父さんは無言のまま、湯呑みを手に取り、一口飲んだ。

「……お父さん。」

私は思わず声をかけた。

お父さんはゆっくり隼人さんを見つめた。

「漁師の娘を、大事にしてくれるか。」

「はい。命をかけて、守ります。」

その言葉に、お父さんの口元がふっと緩んだ。

「ならいい。あとは、紗英次第だな。」

「ありがとう、お父さん……」

思わず私は涙ぐんだ。

隼人さんは、そっと私の手を握ってくれた。

「今日は泊まっていくんだろう。飲みなさい。」

お父さんが言って、徳利を手にした。

「はい、頂きます。」

隼人さんが盃を差し出すと、お父さんはにやりと笑って注いだ。

「うん、美味い。」

口に含んだ隼人さんが、素直な感想を漏らす。

「日本酒が分かるか!」

「ええ、実は祖父が酒蔵をやっていたもので。昔から好きでした。」

「ほう、そうか。じゃあ、ここの酒の良さも分かるな。」
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