誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「うちはな、紗英一人なんだ。兄弟を作ってやれなかったのは、申し訳なかったと思ってる。だが――」

そこで一度言葉を切って、私を見た。

「――紗英しかいないんだよ。」

その言葉には、父としての不器用な愛が詰まっていた。都会に送り出したとはいえ、本音ではずっと、帰ってきてほしいと思っていたのだ。

私の胸がきゅっと締めつけられる。

「隼人さん……」

彼は困ったように私を見て、そしてお父さんに向き直った。

「……ありがとうございます。その想い、ちゃんと受け止めます。」

続く隼人の言葉を、私は息を呑んで待った。

「今すぐは難しいですが、仕事が落ち着いたらこちらに移住しましょう。」

その一言に、お父さんの顔が少し和らいだ。

「隼人さん!」

私は思わず隼人さんの胸に飛び込んだ。

嬉しさと安心が込み上げて、自然と涙があふれる。
< 276 / 291 >

この作品をシェア

pagetop