誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
桐生部長は当たり前のように隣の椅子に腰を下ろし、慣れた手つきで伝票をめくり始めた。

「……あの、もう終わるので。」

そう言ったけれど、手を止める気配はない。

「なら、よかった。」

優しい声に安心したのも束の間、ふと私の髪に柔らかな指先が触れた。

「え……」

驚いて顔を上げると、彼はまっすぐ私を見て言った。

「今日、イタリアンどうかなって思って。」

淡々と、まるで天気の話でもするかのように。

「い、いいえ、そんな! 残業明けに食事なんて……」

慌てて言い訳を口にする私に、彼はクスッと笑った。

「もう予約してあるから。」

そう言って、ひょいと立ち上がる。

(……予約? 最初から、来るつもりだった?)

彼の背中を見つめながら、胸がどんどん高鳴っていく。
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