誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
部長が椅子を引いてくれ、私は小さく礼を言って腰を下ろす。

「……このお店、よく来られるんですか?」

あくまで自然を装ったけれど、言葉の端ににじむのは、抑えきれない興味と、少しの不安。

部長はワインリストを手に取りながら、ちらりと目だけこちらに向けた。

その視線が、なんとも言えず意味深で――私は息を呑んだ。

「接待でね。よく使うんだ。」

メニューに目を通しながら、桐生部長はあっさりと答えた。

「接待、ですか。」

心のどこかがスッと冷める気がした。

「そう。商談が上手くいく店でね。」

ワインリストを閉じた彼の顔には、特別な感情は見えなかった。

(……やっぱり、よく来てるんだ。)

そう思いながら、つい喉元まで出かかった言葉を飲み込む。
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