誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
料理が運ばれ、グラスには深いルビー色のワイン。

そして、目の前には桐生部長。

――何もかもが、完璧すぎる。

こんな状況、人生でそう何度もあるわけがない。

「普段から、残業してるの?」

部長がふと問いかけてきた。

「いえ、月末だけです。」

私はグラスの縁に指を添えながら答える。

「他の人は手伝わないの?」

柔らかい声でそう続ける。

「……みんな、デートで忙しいみたいで。」

言った瞬間、なんだか自分が寂しい人みたいで、少し笑ってしまった。

すると、部長がくすっと微笑んだ。

「じゃあ、君もデートで忙しくならないと。」

冗談っぽく聞こえるけど、言い方があまりにも自然で、胸が軽くざわめいた。

「……相手がいれば、ですけど。」

そう返した私に、部長はワインを一口飲んで、さらりとした口調で言った。
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