誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「このお店のから揚げ、美味しいんだ。」

そう言って桐生部長が連れて行ってくれたのは、こぢんまりした居酒屋だった。

高級レストランじゃない。だけど、居心地がいい。

「いただきます。」

口に運んだから揚げは、本当に美味しくて、思わず笑ってしまった。

部長と交わす他愛もない会話。

でも、ふと、一条さんの言葉が胸によみがえる。

「……今日、一条さんに言われたんです。」

私はグラスを見つめたまま呟いた。

「“泣かされるってわかってて?”って。」

部長は驚きもしなかった。ただ、余裕の笑みを浮かべる。

「紗英は……俺に泣かされると思ってるの?」

その瞬間、テーブルの下でそっと私の手を取ってきた。

「まだ、紗英を抱いてないけど?」

指先が熱くなる。

その言葉の意味――わかってる。

でも、拒む理由が……思い浮かばない。

部長の目が、私のすべてを試すように見つめていた。
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