誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
瑞樹ちゃんの声が得意げに響く。その隣で礼ちゃんがクスクス笑う。ああ、終わったんだ、と私は思った。

胸が痛い。心が張り裂けそうだった。

私だけが特別だと、あの人は言った。

でも、こんな簡単に、別の誰かに抱かれてしまう人を――どうして信じられるの?

足元がふらつく。けれど涙は出なかった。

泣いてはいけない。泣いたら負けだ。

席に戻ると、まだ同じ場所に座っていた部長が私を見た。

「篠原……?」

私は何も言わず、バッグを手に取った。

そのまま、彼に背を向けて歩き出した。

後ろから名前を呼ばれても、もう振り返らなかった。

すると、後ろから駆け寄る足音。

「紗英。」

その声に振り向かずにいると、腕を掴まれた。

「離してください……」

泣き声混じりの私の声に、桐生部長は戸惑ったように言った。
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