誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
デスクに戻ると、まだ心臓が妙に落ち着かないまま、椅子に腰を下ろした。

すると、すぐに隣の上林さんが身を乗り出してきた。

「ねぇ、聞いた? 桐生部長、また女泣かせたって」

どこからそんなに早く噂が回るのか、本当に不思議だ。

「聞いたも何も……その場面、私、見たんです」

ぽつりと告げると、上林さんが椅子から飛び上がりそうになった。

「見たの!? うそっ、マジ!?」

声が大きい。

お願いだから周りに聞こえないでほしい。

「どうだった? どんな感じ?」

身を乗り出してくる彼女に、小さくため息をついた。

「どうもこうも……冷たかったですよ。女性に“好き”って言われて、“困る”って突き放して。」

口調は淡々としているつもりだったけど、心のどこかでまだ引っかかっていた。
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