誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「さよならです、部長。」

私が背を向けようとした瞬間、彼は私の手首を掴んだ。

そして、歩道から一歩外れたビルの陰へと私を連れていく。

「部長、やめて――」

でも次の瞬間、強く、ぎゅっと抱きしめられた。

「離さない。」

低く、震えるような声。その言葉が胸に突き刺さる。

「……どうして……そんなこと……」

「もう、他の女とはしない。」

耳元で囁かれたその言葉が、逆に私の涙を誘う。

「……うそ。だって、今日……」

「違うんだ。あれは――いや、言い訳にしかならないな。」

部長の腕に力がこもる。

「君だけを想う。……本当に、君だけを。」

まるで自分自身に言い聞かせるように、彼は繰り返す。

私は何も言えずに、ただその胸の中で震えていた。

本気で好きだから、こんなにも苦しい。
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