誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
言ってしまった。ずっと胸の奥でうずいていた気持ち。

部長は何も言わずに、ただ静かに私を見つめていた。

「だから、部長から、離れます。」

「……そうか。」

それだけだった。いつものように追いかけてくれると思っていた。けれど、桐生部長は黙っていた。

「自分の気持ちに嘘をつきたくないから。いつか……私があなたを本当に信じられる日が来たら、その時は――」

言葉の続きを飲み込み、私はゆっくりと背を向けた。

背中に感じたのは、部長の沈黙と、手放す痛み。

一歩、また一歩と、距離が遠ざかっていく。

でも、涙があふれるのを止めることはできなかった。


家の天井を見つめながら、私はそっと涙をこぼした。

胸の奥が、じわじわと痛む。

「どうして……こんなに好きになっちゃったんだろう。」

< 84 / 291 >

この作品をシェア

pagetop