誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –
「モデルやってた時に、仕事で知り合って。それから……付き合ってたんです。」

「……そう、なんですね。」

「もう何年も前の話ですよ。」

そう言った美羽さんの顔には、まるで未練がないように見えた。

むしろ、吹っ切れている。きっぱりと、終わった過去。

でも、私の胸はざわついた。

彼女にとっては“過去”でも、私にとっては“今”で、“これから”で、“たった一人の恋”だから。

美羽さんは、そんな私の気持ちを見透かしたように、少しだけ笑った。

「安心してください。もう彼とは何もありません。」

その言葉が、なぜか少し怖かった。

――「もう彼とは何もありません。」

本当にそう?

それとも――“もう一度取り返しに来る気はない”と、あらかじめ釘を刺されたのか。

私は黙って、お茶を一口すするしかなかった。
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