偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー



「あなたのお名前は……?」

「……名乗るほどの者ではない」


 それだけ言って、彼――紫遥は、歩み去った。
 けれど、その眼差しだけが、ずっと月鈴を追っていた。

 それに気づかぬふりをして、月鈴は少しだけ頬を触れた。なぜか、触れられてもいないのに、そこが熱かった。



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