偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー
「陛下は……十五日にしかお越しになりません」
突然、月鈴が言った。紫遥の指先がぴくりと止まる。
「お優しい方だとは思います。けれど……私のことは、覚えていらっしゃらないのでしょう。私がどんな香を好み、何を食べ、何を読んでいるのかも」
それは、寂しさではなかった。
ただの事実として、淡々と語られた。
けれど、紫遥の胸には、それが剣のように突き刺さる。
(……誰よりも、知っているのは、この俺だ)
(仮面の下で、すべてを――そなたのすべてを、見ているのは)