偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー



  ***


 そして、次の十五日。

 仮面をつけた“皇帝”として紫遥は静月宮を訪れた。けれど――


「……お迎え申し上げます、陛下」


 深く頭を下げた月鈴の声には、かすかな緊張が混じっていた。

 目を合わせない。笑みもない。
 前とは、明らかに違う。

 紫遥の胸に、黒い何かが渦巻いた。


(なぜ……。素顔では笑ってくれるのに)

(仮面をつければ、そなたは距離を置く)


 月鈴が「名乗らぬ人」に惹かれ始めていると、わかってしまった。

 だがそれは――皮肉にも、紫遥自身であり、皇帝ではなかった。



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