偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー
「……そなたは、最近よく庭に出ているな」
それは、ただの確認のように聞こえた。
けれど月鈴は、微かに身をすくめた。
「はい。……静月宮の庭が、広くなった気がして」
――誰かを、待っているのだろうか。そう思った瞬間。紫遥の理性が、きしりと軋んだ。
「……誰かと会っているのか?」
「え……?」
「夜、庭に出るとき。そなたの頬に、熱が宿っている。……それは、夜風のせいではないだろう」
「……な、なにを……」
月鈴が戸惑ったそのとき、紫遥は仮面のまま、彼女の手をとった。
強く、けれど乱暴でなく。だが逃がさぬように。