偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー
仮面の皇帝は、月鈴の手を握ったまま動かなかった。
その力は、優しさとは少し違う。
ただ――“離したくない”という執念のような熱が、じわりとにじんでいた。
「言え。誰に、微笑んでいるのか。俺以外の男に、声を許しているのか」
月鈴は混乱していた。
(どうして……いつもは、何も言わないのに)
ほ
今夜の陛下は、明らかに違った。
まるで、仮面の奥で何かが爆ぜたような、鋭い視線――いや、熱。
「……私は、そんなつもりでは……。ただ、静月宮に花を届けてくださった文官の方に、少し話を……」
「陸晴か」
紫遥の声が低く唸った。
「やはり……」
言葉が詰まる。
月鈴は、自分が誰かの怒りを買ったと理解した。