偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー




 月鈴は、動けなかった。

 身体に回された腕が、拒絶を許さない熱を帯びていた。けれど、不思議と怖くはなかった。

 むしろ、その声の震えに――少しだけ、哀しみを感じた。


「陛下……?」


 月鈴の手が、そっと彼の胸に触れた。

 仮面越しではなく、素肌を感じるように。
 その胸の鼓動は、まるで追い詰められた獣のように、激しく打っていた。


「……こんなはずでは、なかった」


 ぽつりと、仮面の奥から洩れる声。

 

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