偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー



「そなたを手に入れようなどと、思っていなかった。最初はただ――兄の代わりとして、義務で通っていた。それだけだった」

「え……?」


 “兄の代わり”。

 意味を理解しかけた瞬間――紫遥は口をつぐみ、顔を逸らした。


「……忘れろ」

「……違うんですね」


 月鈴の声は震えていた。
 けれど怒りではなく、気づいてしまったことへの戸惑いと哀しみに満ちていた。


「……あなたは、陛下じゃない。そう、なんですね」


 紫遥の瞳が、仮面の奥で揺れた。




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