偽りの月妃は、皇帝陛下の寵愛を知りません。 ー月下の偽妃と秘密の蜜夜。ー
「あなたは……“名乗らぬ人”と、同じ目です。あの夜、庭で見たときから……どこか似ていると思ってた。でも、認めたくなかった」
静かに――月鈴の指が、仮面に触れた。
「……どうして、そんなことを……」
紫遥は、何も答えなかった。
けれど、彼女の手を止めることもしなかった。
月鈴は、そっと仮面を持ち上げた。
ゆっくりと、慎重に。
――そこにあったのは、知っている顔だった。
夜の庭で、ささやかな笑みを見せてくれた、あの“名乗らぬ人”の姿。